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運航会社の関空カーゴアクセス(株)は神戸地区の内航海運事業者10社の共同出資で平成3年に設立され、3年半の準備期間を経て平成6年9月の関西国際空港開港と同時に2隻のRoRo船を投入して海上輪送を開始した。
航空貨物の海陸集中一貫輸送はわが国では例がなく、また短距離区間のモーダルシフトとしても注目を浴びた。しかし、貨物量が当初の見込みを大幅に下回ったため、RoRo船を1隻に減らし、従業員も半分にし、就航便数も当初の1日20便を6便に減らすなどの対策を導入している。
このような結果となった理由としては以下の点が関係者からあがっている。
・国際航空貨物量の減少-バブル崩壊後の景気低迷により関西国際空港の貨物取扱量が予想水準に達せず、船社の経営の根拠となっていた1日当たりの輸送量も計画値の3割(250トンに対し75トン)にとどまった。そのため、1隻当たりの平均消席率は17〜18%(トラックが2〜3台)で、採算べ一スの目標にはほど遠い水準であった。
・輸入貨物の利用が少ない-海上ルートを利用する貨物は大部分が輸出貨物で、輸入貨物の利用が少ない。
・阪神高速・湾岸線の利便性が高い-成田空港の例からみても、道路を利用する輸送は定時性の確保が難しく、時間に厳しい国際航空貨物の輸送には問題が多いため、定時性と迅速性が確保できる海上輪送の分担率が大きくなると見込んでいたが、湾岸線はほとんど渋滞もなく想定時間よりも短い時間で輸送できることが荷主やトラック事業者に浸透したため、海上輪送への指向が薄れた。
・阪神・淡路大震災の被害-震災により六甲アイランドのRoRo般用岸壁が崩壊したうえに、六甲アイランドヘのアクセス道路や橋も大きな被害を受けた。RoRo船は六甲アイランドの別のバースを利用したが、効率が悪く、六甲アイランドヘの貨物の搬入量も減少した。
神戸と関西国際空港との間の海陸集中一貫輸送は、短絡航路のモーダルシフトの試金石として注目されていたが、上記のような結果で事業規模を縮小せざるを得ない状況となっている。今後は景気の回復と関西国際空港への貨物便の乗り入れ便数の増加などにより、取扱貨物量は増加すると考えられる。

 

 

 

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